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月光

2023-05-25 17:04:50

一间宽敞的房间,顶部全是玻璃天窗,蓝色的月光静静地照进来,满天的繁星正演奏着无声的交响乐。房间的角落里有几盆百合,每一盆都开了十几朵大大的花,不断地散发着浓郁、沁人心脾的芳香。

对面的角落里有一个小水池,水凉而清澈,飘浮着睡莲。从墙壁的喷水孔里不断有水落进水池,发出轻微的声响,引起一片片的涟漪。水漫过大理石的池边,流到磁砖铺成的地面上,然后不知流向了何处。这里正是他养宠物的房间。

宠物柔软的肢体卧在地上,它还在睡觉,水映着月光缓缓地轻吻着它的脚尖。

“喂,把饭给我拿过来吧。”

主人是一个将近60岁的有修养的男子,他总会在进入这个房间之前,这样命令70多岁的老仆人。

“知道了。今天要拿什么呢?”

“嗯,就拿派、泡芙和蜜瓜吧。”

“是。”

他点上烟斗,深深地吸上二、三口的时候,仆人就会端来一个银色的大托盘,上面堆满了他刚才吩咐过的东西。他把烟斗放到桌上,接过托盘后打开门。

听到门开的声音,宠物抬起身子站了起来,边轻轻地踢着大大的橡胶球边向他走近,高兴地朝他蹭着身子,用它美丽的眼睛紧紧地抬头仰望着他。

他俯下身子,膝盖任凭宠物倚着,用右手抚摸着它雪白的背部,用左手拿起地上托盘里的派,喂进宠物的嘴里。主人看着宠物吃东西时脸上充满了无法言说的喜悦。

从墙壁风孔里出来的微风,将宠物柔顺的长发轻轻吹起,月光也仿佛一起加入了进来。宠物时不时用它那细长的眼睛仰望着主人,主人也每次都温柔地回望着它,在心里对自己说:”能有这么好的宠物的人,除了我应该再没有了吧。”

宠物,它是一个15岁的混血少女。如果只是混血少女的话,这个世上有很多,可是像他的宠物这样的,可能是绝无仅有的。15年前,他领养了这个刚出生的婴儿,饱含感情地细心养育。幸亏有父母留下的遗产,还有一个父母留下的忠实仆人。再加上他还是一个大医院的医生,所以他才能得到这个婴儿,而且能够把婴儿照顾得很好。

可是他在养育宠物的时候从来都不说话。食物肯定是要自己亲手喂,几乎不会让仆人进到房间里来。实在没办法需要帮忙的时候,也吩咐过绝对不许出声,当然仆人也从来没有违背过他。

人类根本就不需要语言,语言只会使感情变得苍白。人们将不用语言而获得的感情,用语言将其摧毁。他就是这样想的。

这个宠物美丽的身体里,充满着对他的爱,而且只有爱。在这个安静的房间里,没有任何世间丑陋的东西存在。

他抚摸着宠物的肩膀,看着宠物静静地把蜜瓜吃完。然后,宠物轻轻地跑向飘浮着睡莲的水池,用手接住喷水孔里流出的水喝下去。水从指间漏出,映照着宠物雪白身体的水面也变得波光粼粼。喝完水,宠物坐在水池边上,用大大地眼睛望着他。

他把宠物吃剩的食物收拾到托盘里,放到墙上的架子上。然后,他用手招呼宠物过来,用蓝色的缎带将它的头发扎起,。这是宠物每天例行的饭后运动。

宠物像弹簧一样一跳,把自己匀称的身体挂到了铁棒上。这个充满着青白色光芒的如海底般的空间里,顿时出现了一个又一个雪白的弧线,每一个弧线都会伴随着流星的闪耀还有悦耳的铃声,那是它头发缎带上绑着的小金铃带来的。百合花的香味四散开去,和喷出的水流混到了一起。

铃声停住,宠物肌肤略红,出了点汗。宠物看着他,他点了点头,宠物就跳进了水池里。水一下了漫了出来,飞溅到磁砖上。

他每天都会度过这样的夜晚。夜晚明确地显示着语言是多么地没有意义,在静静地沉默中夜越来越深。

白天,宠物沐浴着从玻璃天窗照进来的阳光睡觉,在他快回来的时候醒来。

香甜的、如梦一般的夜晚。不过这样的夜晚,是他拒绝了所有的玩乐,花了十几年的时间才得到的。一想到他付出的忍耐和努力,也不好妄自评价他行为是否正当了。

他晚上睡得很晚,吃完早饭就给宠物喂食,然后心情愉快地开车去医院。午后,宠物睡着了,安静的家里,只有老仆人偶尔会懒懒地从外面调节一下房间的温度,而老仆人自己,也不知道什么时候已经靠在椅子上打起了盹。时间就这样静静地流逝着。

可是,突然有一天,这个充满了和平与幸福的家里,出现了看不见的风暴。正坐在椅子上迷迷糊糊打盹的仆人,一下子被电话铃声惊醒了。

“喂,不好了。”

“喂,出什么事儿了吗……”

仆人问道。

“你们家的主人刚刚出了交通事故,伤势很严重。”

“真的吗?”

仆人举着听筒,一下子坐到了椅子上。

“情况怎么样?”

“不容乐观。我们也听不太懂,他不停地说’还得喂食呢’什么的胡话。如果你们有养狗什么的,那就麻烦您好好地照顾一下。”

“知道了……”

可是到了晚上,仆人更不知道该怎么办了。应该怎么喂食呢?仆人学着主人平时的样子,在托盘里装上奶油蛋糕、橙子什么的,小心翼翼地打开了门。听到声音,本来躺着的宠物高兴地抬起身子,可一见到是仆人进来,慌忙跳进水池里,藏到睡莲的下面。

“主人受伤了,今晚回不来了,你就吃这个吧。”

仆人禁不住解释起来,可宠物根本就不可能听懂。何止如此,因为第一次听到有人说话,更是吓坏了。仆人笨拙的用手比划了几下,可是那些动作和这个房间的氛围太不相称了。也许自己在这儿它就不会吃吧,仆人这样想着就把托盘放在磁砖上,走出去了。

可是过了一会儿,仆人悄悄地朝里面看时,托盘里面的东西还是一点儿也没少。没有感情佐餐就什么都吃下的宠物,呆呆地坐在水池边上,等待着。

第二天早上,仆人打电话给主人住的那个医院,可听说还没有脱离危险。

“可不可以见面和他说说话呀?”

“他还没有恢复意识,如果只是来探视是可以的。”

仆人本来是想把宠物带过去好歹让主人喂它吃饭,这下看来是行不通了。

仆人进到房间里换了食物,还加上了主人经常喂的泡芙。

“吃一点吧,求求你了。主人回来了,会生我气的……”

仆人哽咽着哀求,可宠物根本就不懂。到了晚上,盘里的东西一点儿也没少。瘦了一些,脸色有些苍白的宠物,正把脸凑到百合花上闻着花香。

主人一直没有脱离危险,宠物也越来越苍白瘦弱了。仆人也想过要找个大夫来看看宠物,但这等于是拿自己的职业生涯冒险。老仆人坐立不安,只能时不时地好像想起来了似的去看看宠物的房间,或打电话给医院。

“您的主人,去世了……”

听筒被无力地扔到了桌子上,仆人朝着宠物的房间走去。

主人最心爱的宠物,最亲近的家人,不,也可以说那就是他自己。怎么向它传达这个不幸的消息呢?虽然想不出什么办法,可是也不能不告诉它啊。

 




 

月の光

星 新一

広い部屋の、ガラス張りの天井からは、青みをおびた月の光が静かに流れ込み、きらめく星々が、音のない交響楽をかなでていた。部屋の片すみにあるいくつかの鉢植えのユリは、それぞれ十以上もの花を重そうにつけ、濃い、むせるようなかおりを絶えまなくまき散らしている。

その反対側のすみの小さなプールの水は、冷やかに澄んで、スイレンの花を浮かせ、壁の噴水からふき出しつづけている水滴を受けて、かすかな音と波紋とをつぎつぎとうみだしていた。水は、大理石のプールのふちを越えてあふれ、タイルの床をただよいながら、どこかに流れ去る。ここが彼のペットの飼われている室であった。

彼のペットは、しなやかなからだを床の上に横たえて眠り、水はその足先を月光に映えながらゆっくりと洗った。

「おい、えさを持ってきてくれないか」

飼い主の六十歳ちかい品のよい男は、この室に入るまえ、いつものように七十すぎの老人の召使に言いつけた。

「かしこまりました。きょうは、なににいたしまようか」

「そうだな。パイと、シュークリームと、メロンがいいだろう」

「はい」

彼がパイプに火をつけ、二、三回、ふかぶかと煙をたちのぼらせているうちに、召使は言いつけられた品々を、大きな銀の盆の上に山のようにつみあげて持ってきた。彼はパイプを机の上に置き、それを受け取り、扉をあけた。

扉の開く音で、ペットは身をおこして立ちあがり、ゴムの大きなボールを軽く足でけりながら彼に近よって、うれしそうに身をすりよせ、美しい目でじっと見あげた。

彼は身をかがめ、ひざをペットのもたれるがままにさせ、右手でそのまっ白な背中をなで、左手で床においた盆の上からパイを取って口に入れてやった。ペットはそれを食べ、見つめる彼の表情には、たとえようもない楽しげな表情が満ちた。

壁の装置から送りこまれるかすかな風は、ペットの長いつやのあるかすかな髪をさらさらとそよがせ、月の光はそれを手伝っているように見えた。ペットは時おり切れの長い目で彼を見あげ、彼もそのたびにやさしく見かえしてやりながら「こんなすばらしいペットを持っているものは、ほかにだれもいないだろうな」と、心のなかで自分自身にささやいた。

ペット。それは十五歳の混血の少女だった。しかし、混血の少女なら世の中にはいくらもいるかもしれないが、彼のペットのようなのは、おそらくひとりだっていないだろう。十五年前、生まれたての赤ん坊をもらいうけ、愛情をこめて丹念に育ててきたのだ。さいわい、彼には親ゆずりの財産があったし、また、親ゆずりの忠実な一人の召使もあった。それに、彼がある大きな病院に勤める医者であることも、いい条件だった。だから手に入ったのだし、成長の世話もゆきとどいた。

しかし、彼はペットをこれまで育ててくるあいだ、言葉をひとつも使わなかった。えさは必ず自分の手で与えたし、召使を室内にはいらせることは、ほとんどなかった。やむを得ずはいる時にも絶対に声を立てないように言いつけたし、召使は忠実にそれに従った。

言葉など人間にはいらない。言葉がどれほど愛情を薄めているだろうか。人びとは言葉なくして得た愛情を、必ず言葉によって失っている。彼はこのように考えたのだった。

このペットの美しいからだのなかには、愛情ばかりがいっぱいにつまっている。そして、それ以外のものはなにもない。この静かな部屋のなかにも、世の中のみにくいことは、なにひとつしみ込んでいないのだ。

彼は肩をなで、ペットはおとなしくメロンを食べ終えた。そして、ペットはスイレンの浮かぶプールに軽くかけより、噴水から散る水を手で受けて口に入れた。水は指のあいだからこぼれ、ペットの白いからだをうつす水面をきらきらと乱した。水を飲んだペットは、プールのふちに腰をかけ、大きな目でしばらく彼を見つめていた。

彼はペットの食べのこしたえさを銀の盆の上に片づけ、壁の棚の上にのせた。それから、ペットを手で招きよせ、青いリボンで髪をたばねてやり、部屋のまんなかの空間を横切っている銀色の鉄棒を指さした。いつもペットのする、食後の運動なのだった。

ペットはすんなりしたからだをバネのようにはずませ、それに飛びついた。青白い光で満ちた海の底のような空間に、まっ白な色が何回も弧を描き、そのたびにリボンにつけられている小さな金の鈴が流れ星となってきらめき、響きを飛ばせた。ユリの花のかおりはかき乱され、噴水とたわむれた。

鈴の響きはとだえ、ほんのりと赤味をおび汗ばんだぺっとは、彼を見た。彼がうなすくと、ペットはプールに飛び込み、そのために水は勢いよくあふれ、タイルの上を踊りまわった。

彼は毎日、このようにしてはじまる夜を持った。夜は言葉の無意味さをはっきり示しながら、静かな沈黙のうちにふける。

ペットは、昼のあいだはガラス越しにさし込む日の光を浴びて眠り、彼の帰宅のころに目ざめるのだ。

甘い、夢のような夜。だが、彼はこれを、あらゆる遊びを断った十数年をつぎ込んで得たのだ。その忍耐と努力を思えば、決して不当なものと呼ぶことはできない。

彼は夜おそく眠り、朝の食事をすますとペットにえさをやり、すがすがしい気分で自動車を運転して病院にでかける。ペットが眠りにはいる静まり返ったこの家の午後には、老いた召使が、時どきものうい動作で室の気温を外から調節する動きだけがあり、その召使さえもまた、いつしか椅子に寄りかかってもどろみ、平和な時間が流れて行くのだ。

しかし、ある日、突然、この平和と幸福にあるれた家に、見えない嵐がもたらされ、椅子にかけてうつらうつらしていた召使は、電話のベルで驚かされた。

「もしもし、大変なことです」

「はい、なにが起ったのでしょうか……」

召使は聞き返した。

「おたくのご主人がたったいま、自動車の事故で、大けがをなさったのです」

「本当でしょうか」

召使は受話器を手にしたまま、ふたたび椅子に腰をおとした。

「ようすはどうなのです」

「だいぶ重態です。よくわかりませんが、うわごとで、えさをやらなくてはと、くり返して言っています。もし、犬でも飼っていらっしゃるのなら、よろしくお世話をお願いしますよ」

「はい……」

だが、夜になるにつれ、召使の困り方は高まった。どうやって、えさをやったらよいのだろうか。召使は主人がいつもやっていたように、盆の上にショートケーキ、オレンジなどをのせて、おそるおそる扉をあけた。その音で、寝そべっていたペットはうれしそうに身を起しかけたが、召使の姿を見て、あわててプールにとび込み、スイレンの葉の下に身をひそめた。

「ご主人はけがをなさったのだ。今晩はこられないから、これを食べなさい」

召使は思わず話しかけたが、ペットには通じるはずがなかった。それどころか、はじめて聞く声にいっそうおびえた。召使はぎこちなく手まねをくり返したが、それはこの室のようすに似つかわしくなかった。自分がいては食べないのだろうか。召使はこう考えて銀の盆をタイルの床の上におき、扉から出た。

しかし、しばらくして、ふたたび召使がそっとのぞき込んだ時にも、盆の上のものは少しも減っていなかった。愛情という副食物がないとなにも食べられないペットは、プールのふちにぼんやりと腰をかけ、待っていた。

つぎの朝、召使は主人の入院している病院に電話をかけてみたが、危機は脱していなかった。

「面会して、お話しできないでしょうか」

「とんでもありません。顔をごらんになるだけならかまいませんが」

召使はなんとかしてペットを連れてゆき、えさを与えてもらおうと思ったのだったが、それはとても無理らしかった。

召使は部屋に入り、えさを取りかえた。主人がよく与えていたシュークリームも加えて。

「食べておくれよ。お願いだ。ご主人がお帰りになった時に、ひどく怒られるから……」

召使はおろおろして泣くようにたのんだが、ペットには通じなかった。夜になっても、盆の上のえさは少しも減っていなかった。いくらかやせ、色の青ざめたペットは、ユリの花に顔をよせにおいをかいでいた。

主人の危篤はつづき、ペットはさらに青白くやせた。召使はペットのために医者を呼ぼうかとも考えたが、それをすることは、もはや新しく勤め先を探せない身で辞表を書くことを意味する。老いた召使は落ち着かず、ペットの室をのぞくのと、入院先に電話するのとを、時どき思い出したようにくり返した。

「ご主人が、なくなられました……」

召使は受話器をもどさず、机の上に気抜けしたように投げ出し、ペットの室に足をむけた。

主人の最も愛したペット、最も親しかった家族、いや、彼そのものだったかもしれない。これに、どうやってこの不幸を伝えたらいいのだろうか。無理かもしれないが、つたえないわけにはいかない。